背理法を現実のモデルに適用すべきでは無い

背理法を使うとき忘れてはならないこと - hiroyukikojimaの日記
バーナンキの背理法に足りないもの - hiroyukikojimaの日記
バーナンキの背理法とやらの騒動

この辺の話なんですが。

そもそも背理法とは
命題Aを示したいときに
「Aの否定」を仮定して、矛盾を導く
という手順をとる証明方法のことです。


で、この簡易版として
「Aの否定」を仮定して、現実にありそうもないことを導く
という手法を使うことがあるのです。
しかしこのやり方、
とくに「現実に適用可能と思われているモデル系」に対して使うのは
非常に危ないと思います。
なぜかと言うと、
この「モデル」が真に現実に適用可能かどうかは
そのモデルから導き出される定理やらなんやらが
現実に則しているかどうかで判断されるべきだからです。


その判定材料であるはずの定理を導く際に
「現実に在りそうも無いから」という主張を利用してしまうと
それは何の証明にもなってません。


引用した例でいうと「無税国家の存在はありえない」は
現実世界では納得できるかもしれませんが
経済学の採用しているモデル系で、即座に矛盾が導けるかどうかは
自明で無いように思います。
そういうわけで、こういう背理法の使い方は
あまりよくないのではないかと思う次第です。


(ひょっとして、引用の例では経済学のモデルではなく
現実世界そのものに対して議論しているのかもしれませんが
その場合、そもそも矛盾を導くのは不可能でしょう。)