夕凪の街 桜の国(こうの史代)

夕凪の街桜の国
夕凪の街桜の国
posted with amazlet on 05.09.26
こうの 史代
双葉社 (2004/10)
売り上げランキング: 718


久々に素晴らしい。
中篇3つ、全部で100ページほどの短い漫画。
この読書感想を読んでいるあなた、ブラウザを閉じて街へ出てこれ買ってきなさい。
ブラウザを閉じたくなければ、アマゾンで注文して届くまでおとなしく家で待ちなさい。
買うのが嫌という人は、漫画喫茶にでも行って読みなさい。今すく読みなさい。






というわけで、ここから先はそこまで言われても読まない頑固者向けに書きます。
この話は広島の原爆についての物語。
まあ、お待ちなさい。
戦争についての物語と聞いて、読む気をなくした人にこそ読んで欲しい。
実は自分もそうでした。
この漫画が素晴らしいという評価を目にしてから
気にはなっていたのだが、ずっと読むことを避けていた。
第一に、作者の思想を押し付けられるんじゃないかと不安だったこと
そしてもう一つは、この種の問題と関わることを避けたい
という気持ちが自分にあったこと。


第一の理由は、まったくの見当違いでした。
もちろん作者は何らかの思想を持っているでしょう(あたりまえか)。
でもそれを押し付けるような真似はしない。
そうではなく、ただただ心を揺さぶる。
このことは、第二の理由にも関わってきます。
自分が否応なしに巻き込まれる、引きこまれてしまう。
作者は紋切り型にこの問題を描いてはいない。
この本を読んだその日から、主義主張が180°変わったりはしない。
もちろん、「原子爆弾ってダメだよな」で終るわけでもない。
単なる悲しい話ではない。単なる悲惨な話ではない。
どす黒く、鮮やかで、不幸で、力強い話。